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社長&顧問ブログ

2025.5.6

歌川国芳

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

 

昨日まではミレーの「落穂ひろい」という絵で

それは貧しい農民の姿を静かに描いた名作として知られていると言う話でした。

 

絵には、麦の穂を拾い集める3人の女性が描かれていますが、

その背景には、収穫を終えた豊かな畑と、荷馬車に乗った裕福な人々の姿が小さく描かれています。

この対比は、当時のフランス社会における貧富の差や、労働する人々の厳しい現実を静かに訴えるものでした。

 

ミレーの絵は、派手な演出はありませんが、

見る人の心にじわりと染み入るようなメッセージを持っています。

見た目には穏やかで優しいけれど、

その奥には強い社会的な問いかけが込められているのです。

 

実は日本にも、このような社会へのまなざしを絵に込めた画家がいました。

それが江戸時代の浮世絵師、歌川国芳です。

国芳は、武者絵や風景画でも有名ですが、

ユーモアと風刺を織り交ぜた絵を数多く描き、庶民に大人気の絵師でした。

そんな国芳の代表的な風刺画のひとつに

「みかけハこハゐが とんだいゝ人だ」という絵があります。

タイトルだけを見ると、なんだか不思議な文章に見えますが、

現代の言葉に直すと

「見かけは怖いけど、本当はとても良い人なんだよ」という意味になります。

 

では、その絵はどのようなものなのでしょうか??。

一見すると、髪の毛はボサボサで、目つきも鋭く、顔つきも恐ろしくて、

まるで鬼のような男の顔が描かれています。

ぱっと見た印象では、誰もが「怖い人だ」と思ってしまうような姿です。

 

ところが、よく見てみると驚くことに、

その顔は人間の身体のパーツを組み合わせて描かれているのです。

耳、目、鼻、口、手、足──それぞれが小さな人物として描かれていて、

日常の中で人助けをしたり、困っている人を支えたりしている姿が見てとれます。

つまり、この「怖そうな顔」は、

実は「良い人たち」が集まってできたものだったのです。

 

国芳は、この絵を通して

「人を見た目だけで判断してはいけない」ということを伝えています。

見かけが怖そうでも、実は優しい人かもしれない。

逆に、見た目が穏やかでも中身が冷たい人だっているかもしれない。

そんな深いメッセージを、説教くさくなく、笑いやユーモアを交えて描いているのがこの絵の魅力です。

 

そして、この絵にはもうひとつの面白さがあります。

それは「だまし絵」や「トリックアート」とも言えるような仕掛けです。

遠くから見るとただの怖い顔にしか見えませんが、

近づいてよく見ると、それぞれのパーツに意味があることに気づきます。

 

小さな人物ひとりひとりが別々の物語を持ち、

それが集まって一つの全体を作っているのです。

このような絵のことを「寄せ絵」と呼び、国芳はこの技法を得意としました。

 

西洋でも同じ時代に視覚の錯覚を使ったアートはありましたが、

国芳は日本の庶民感覚と遊び心を取り入れて、独自のスタイルを生み出しました。

この絵の面白さは、ただ絵として眺めるだけでなく、見る人自身が発見し、

気づき、笑って、そして考えるきっかけを与えてくれることにあります。

 

実はこの考え方、先ほどのミレーにも共通するものなのです。

ミレーはフランスの農民たちの姿を、堂々と、しかし優しく描きました。

そこには

「こんなにも一生懸命働いている人たちがいるのに、なぜ貧しいままなのか?」

という問いかけがあります。

 

国芳の絵にも

「なぜ人は見かけで人を判断してしまうのか?」

「なぜ中身より外見が重視されてしまうのか?」という疑問があります。

 

ミレーも国芳も、決して大声で批判をしているわけではありません。

けれど、静かに、そして確かに、社会の矛盾や人々の思い込みに対して

「ちょっと立ち止まって考えてみよう」と問いかけてくるのです。

 

日本とフランス、時代も文化も異なりますが、

絵という手段で、庶民の声なき声に光を当てようとした彼らの姿勢には、

共通の精神があるように思います。

「みかけハこハゐが とんだいゝ人だ」──この一言には、

昔も今も変わらない人間観察の深さと、優しい気づきが込められています。

 

誰もが日常の中で、つい人を見た目で判断してしまうことがあります。

でも、本当に大切なのは、その人がどんな行動をしているのか、どんな心を持っているのか、ということなのではないでしょうか??。

 

国芳の絵は、江戸の人々に笑いとともに、そんなことをそっと教えてくれていました。

そしてそれは、現代の私たちにも通じるメッセージとして、今も力を持ち続けているのです。見かけだけでなく、その奥にあるものを見ようとする心。

それが、絵を通して受け取る国芳からの贈り物なのかもしれませんね。

 

是非一度ご覧ください。。

 

 

明日は 絵画から他の芸術の話に

続く、、、。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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