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社長&顧問ブログ

2025.9.26

神仏習合

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

昨日までは他国のお彼岸の話しでした。

 

お彼岸は日本独自の神仏習合と言う文化だったのですね、、、

 

今日は この話に続きます、、。

 

神仏習合という言葉は日本の宗教文化を理解するうえでとても大切なものです。

神道と仏教という一見別々の信仰が日本では自然に融合し、

人々の生活に深く根づいていきました。

 

その象徴が神社の中にお寺があり、お寺の中に神社があるという光景です。

 

なぜそんなことが起こったのか、いつ頃から始まったのか、

そして今もどこでその姿を見ることができるのかをたどってみます。

 

仏教が日本に伝わったのは六世紀の飛鳥時代です。

当時すでに八百万の神を祀る神道が根づいていましたが、

新しく伝来した仏教は排除されず、むしろ共存する道が選ばれました。

 

その背景にあったのが本地垂迹説という考え方です。

本地とは仏や菩薩の本来の姿、

垂迹とはその仏や菩薩が人々を救うために日本の神の姿で現れることを意味します。

つまり日本の神は仏が姿を変えた存在だという理解で、

これによって神と仏は対立するものではなく

補い合うものとして信じられるようになりました。

 

奈良時代には神社の境内に神宮寺と呼ばれる寺が建てられました。

神に仏の力を授けるために仏事や読経を行い神威を高めると考えられたのです。

 

大分の宇佐神宮には弥勒寺が置かれ、八幡神は八幡大菩薩と呼ばれるようになりました。

 

奈良の春日大社と興福寺、滋賀の日吉大社と延暦寺も有名で、

神社と寺院が一体となって祈りを捧げていました。

 

逆に寺院の境内に神を祀る鎮守社も置かれました。

奈良の東大寺には大仏建立の際に宇佐八幡を勧請した手向山八幡宮が祀られ、

比叡山延暦寺の鎮守は日吉大社、

高野山金剛峯寺の鎮守は丹生都比売神社と高野御子神社でした。

 

お寺を守る神が祀られたことで人々はより安心して仏教に帰依できたのです。

 

鎌倉時代から江戸時代にかけて神仏習合は全国に広がり、

熊野三山では熊野権現が阿弥陀如来や千手観音と結びつきました。

 

伊勢神宮にも神宮寺があり、神事と仏事が一体で行われました。

神社の祭礼で僧侶が読経をしたり、寺で神を祀ったりすることはごく普通で、

日本人は神と仏を分けて考えませんでした。

 

ところが明治時代になると大きな転機が訪れます。

 

政府は国家神道を確立するために神仏分離を命じ、

神宮寺や寺の鎮守社を排除し廃仏毀釈と呼ばれる運動が各地で起こりました。

 

奈良や九州では仏像が破壊され寺が壊されることもありました。

 

千年以上続いた神仏習合は大きく崩れましたが、

それでも完全に消え去ることはありませんでした。

人々の信仰心の中には神と仏を共に敬う心が残り、

今も各地にその名残が見られます。

 

例えば宇佐神宮では八幡大菩薩の名残を感じることができ、

春日大社と興福寺は今も深い関係を示しています。

 

日吉大社は延暦寺との結びつきが色濃く、

東大寺の境内には手向山八幡宮が鎮座しています。

 

高野山には丹生都比売神社があり、

熊野三山では神と仏が共に祀られる姿を見ることができます。

 

観光で訪れると鳥居や神社らしい建築のすぐそばに

仏教的な堂や仏像が並ぶ光景に出会い、これが神仏習合なのだと実感できます。

 

日常生活の中にも神仏習合の名残は残っています。

 

お正月には神社で初詣をし、

春秋のお彼岸にはお寺で先祖供養をする習慣はその典型です。

七五三や厄払いは神社で行い、葬儀や法事はお寺で行うという住み分けもその表れです。

 

夏祭りでは神社の神事と寺院の仏事が同じ地域で同時に営まれることも珍しくありません。

 

観光の視点から見ると、神仏習合を意識して旅をするのはとても面白い体験になります。

熊野古道を歩けば参道のあちこちで神と仏に手を合わせることになりますし、

高野山では仏教の聖地でありながら神社が守護する不思議な雰囲気に出会えます。

 

奈良や滋賀では神社とお寺が隣り合い、境界線が曖昧なまま共存しています。

 

旅先で「ここには神仏習合の歴史がある」と意識しながら参拝すると、

ただの観光以上に深い感慨を得られるでしょう。

 

こうして見ていくと神仏習合は単なる宗教的な現象ではなく、

日本人の暮らしや心の在り方を形づくった文化そのものだと分かります。

 

神道は自然や祖先とのつながりを重んじ、仏教は死後や心の救済を説きます。

その両者を受け入れた日本人は

日常の安心から死後の安らぎまで一貫して信仰の中に見出しました。

 

だからこそ今も神社とお寺の両方に親しみを感じ、

季節の行事や人生の節目を通して自然に神仏習合の世界を生きているのです。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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