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社長&顧問ブログ

2025.10.16

商業オリンピック

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

 

昨日までは

スポーツの日に関する話でした。

 

今日は オリンピックについての話になります。

 

オリンピックという言葉を聞くと、

世界中の人々が一つになるような感動の瞬間を思い浮かべます。

 

国旗が掲げられ、選手たちが涙を流し、観客が一体となって拍手を送る。

その光景には、国境も言葉の壁もありません。

けれども、そんなオリンピックも最初から今のような姿だったわけではありません。

そこには、理想と現実が交錯する長い歴史がありました。

 

オリンピックが「商業オリンピック」と呼ばれるようになるまでの道のりには、

人間の夢と努力、そして時代の流れが映し出されています。

 

近代オリンピックの父と呼ばれるのは、

フランスの教育者ピエール・ド・クーベルタン男爵です。

 

彼は1896年に第1回大会をアテネで開催し、

「スポーツを通じて世界平和を築く」という崇高な理想を掲げました。

 

その精神は“アマチュアリズム”と呼ばれ、お金のためではなく、

純粋な心でスポーツを行うことが尊ばれました。

つまり、プロとして報酬を得る選手は出場できなかったのです。

 

しかし20世紀が進むにつれて、時代は大きく変わっていきます。

 

戦後、テレビが普及し、オリンピックは世界中で生中継されるようになりました。

とくに1964年の東京オリンピックは、テレビとともに成長した大会でした。

日本中の家庭がテレビの前で息をのむように開会式を見つめ、

世界中に「平和国家・日本」の姿を伝えました。

 

この時からオリンピックは“映像の祭典”となり、放送権や広告収入が動くようになります。

企業のロゴがスタジアムに並び、スポンサー契約が大会を支える仕組みが生まれたのです。

 

そして決定的な転換点が訪れたのが1984年、ロサンゼルス大会でした。

 

冷戦の影響で前回大会が赤字に終わった後、この大会の運営を任されたのが、

実業家ピーター・ユベロスでした。

彼は国家からの補助金を一切使わず、

テレビ放映権とスポンサーだけで大会を成功させるという大胆な計画を立てました。

 

結果、コカ・コーラやマクドナルド、IBMなどの世界的企業が協賛に入り、

NBCテレビは史上最高額の放映権料を支払いました。

 

大会は大成功し、なんと史上初の黒字運営を達成します。

この時、世界はオリンピックが“商業的にも成功できる祭典”であることを知り、

「商業オリンピック」という言葉が生まれたのです。

 

それは同時に、スポーツとビジネスが共存する新しい時代の始まりでもありました。

 

一方で、もう一つの大きな変化が起こります。それが“プロ選手の参加”の解禁です。

かつては純粋なアマチュアしか出場できませんでしたが、

現実には東欧やソ連の選手たちは国の支援を受け、

実質的には職業選手と変わらない存在でした。

そのため、西側諸国の本当のアマチュア選手たちは不利な立場に立たされていたのです。

 

この不公平を是正しようという声が高まり、

IOC(国際オリンピック委員会)は徐々に方針を変えていきました。

 

そして1988年のソウル大会から一部の競技でプロ参加が認められ、

決定的な変化となったのが1992年のバルセロナ大会でした。

 

バスケットボール男子に、

アメリカのNBAのスターたちが「ドリームチーム」として出場したのです。

マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソン、ラリー・バード――

彼らの華麗なプレーは世界中を魅了しました。

 

この時、IOCのサマランチ会長は

「オリンピックは最高の選手が集う場所であるべきだ」と宣言し、

プロとアマの区別を廃止しました。

 

それはスポーツの“純粋さ”を失う危険もはらんでいましたが、

同時に「努力するすべての人に門戸を開く」という意味でもありました。

 

こうしてオリンピックは、理想と現実の両立を模索しながら、

時代とともに進化していきます。

 

今日、オリンピックは単なる競技大会ではなく、

国と国、人と人が平和のもとに集う象徴です。

 

確かにスポンサーの影響や商業化への批判はあります。

しかし、その中にある

「人間の限界に挑む姿」「誰かを応援する心」「世界が一つになる瞬間」は、

今も変わらず私たちの心を動かします。

 

聖火の炎が灯されるたびに思い出すのです。

お金や名誉を超えて、人が夢を追う姿こそが、オリンピックの本当の輝きなのだと。

 

商業オリンピックと呼ばれるようになった現代でも、その炎は消えることなく、

人々の希望を照らし続けています。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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