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2025.7.17

一帯一路

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

昨日まではシルクロードの話しでした。

今日は 現代版シルクロードと言われている 一帯一路の話に進みます、、。

 

「一帯一路」という構想は、

見た目には「昔のシルクロードをよみがえらせる夢のような国際プロジェクト」

として紹介されていますが、

 

その本当の姿はもっと現実的で、しかもかなり戦略的なものです。

そしてその中心にいるのが、中国の国家主席・習近平です。

 

彼が2013年にこの構想を世界に向けて発表し、

今も力強く推し進めているのです。

 

そもそも「一帯一路」という言葉は、中国とアジア・アフリカ・ヨーロッパの国々を、

陸と海の二つの道でつなぐという意味を持っています。

 

「一帯」は「シルクロード経済ベルト」と呼ばれる陸路のことで、

「一路」は「21世紀海上シルクロード」という海のルートのことを指します。

 

習近平は2013年9月、カザフスタンで「一帯」の構想を、

同年10月にはインドネシアで「一路」の構想を、それぞれ演説の中で提唱しました。

これが「一帯一路」の始まりです。

 

では、なぜ習近平はこうした構想を打ち出したのでしょうか?

 

理由はいくつかありますが、まず一番大きいのは中国の国内事情です。

当時の中国は、これまでのように

「ものをたくさん作って、海外に売って儲ける」というやり方が

うまくいかなくなっていました。

 

工場はつくりすぎで在庫があふれ、地方では失業者が増え、

経済の成長も鈍ってきていたのです。

 

そこで習近平は考えました。

「余った鉄やセメント、働き手たちを、海外のインフラ開発に使えばいいじゃないか」と。

 

つまり、

中国で余っている資源や技術を、道路や鉄道、港などをつくるために他の国に提供しながら、自国の経済を支える道を選んだのです。

 

次に、もうひとつの大きな狙いは

「中国の存在感を世界で大きくすること」です。

 

一帯一路で協力する国の多くは、まだ発展の途中にある国々です。

そうした国に中国が資金や技術を提供し、道路や港、電力網などを整備すれば、

相手の国は中国に感謝し、深い関係を築くことになります。

 

でも、それだけではありません。

もし相手の国が借りたお金を返せなくなったら、

中国は港や鉄道などの重要な施設を長期にわたって借り受けることができます。

実際、スリランカのハンバントタ港は、

返済ができずに中国に99年間貸し出されました。

 

このように、一帯一路は「助ける」ように見せかけながら

、相手国の重要な拠点を自分のものにしていく戦略でもあるのです。

 

さらに習近平は、「お金の面でも中国が中心になるべきだ」と考えました。

 

今の世界では、お金の流れを握っているのはアメリカやヨーロッパの国々です。

たとえば、世界銀行や国際通貨基金(IMF)は

アメリカや西側諸国のルールで動いています。

 

そこで中国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や

シルクロード基金という新しい仕組みをつくり、

人民元をもっと国際的に使えるようにしようとしています。

お金のやりとりでも中国が中心になれば、

世界に対する影響力がもっと大きくなるからです。

 

また、一帯一路には中国国内の安定という目的もあります。

中国の内陸部には、ウイグル自治区やチベット自治区といった、

歴史的に中国政府との関係が複雑な地域があります。

これらの地域は経済的にも遅れていて、宗教や民族の対立もあります。

 

習近平は、一帯一路のプロジェクトを通じてこの地域に投資を行い、

経済を活性化させて人々の不満を減らし、

国の統治を安定させたいと考えたのです。

 

そしてもう一つ忘れてはいけないのが、「アメリカへの対抗」という側面です。

アメリカは長年、世界のリーダーとして政治や経済のルールを決めてきました。

でも習近平は、「21世紀は中国の時代だ」と考えています。

一帯一路を使って中東やアフリカ、ヨーロッパの一部としっかりつながり、

「アメリカ一強の世界」ではなく、

「中国も中心にいる多極的な世界」にしたいという思いがあるのです。

 

このように、一帯一路はただの経済プロジェクトではありません。

中国の国内問題を解決し、世界における立場を強め、

自国の価値観やルールを広めようとする、

習近平の野心が込められた大きな戦略です。

 

そしてそれは、ただの思いつきではなく、

しっかりと国家方針に組み込まれています。

 

2017年の共産党大会では一帯一路が正式に「新時代の中国の指針」として採択され、

2018年には憲法にもその理念が盛り込まれました。つまり、

「習近平の構想」が、いまや「中国の憲法レベルの国家戦略」になったというわけです。

 

また世界中で開かれる「一帯一路フォーラム」では、

必ず習近平本人が登場してスピーチを行い、

この構想が彼自身の強い意志で動いているものであることを、

内外にアピールしています。

 

こうした点から見ても、

一帯一路はまさに「習近平時代の中国」を象徴するプロジェクトだと言えるでしょう。

 

最後にまとめると、

「一帯一路はシルクロードを真似たのか?」という問いに対しては、

「見た目は似ているけれど、中身はまったく別物」と言えます。

 

確かに古代シルクロードのように国と国をつなぐというイメージはありますが、

実際には現代の中国が、経済・政治・軍事・思想のすべてを総動員して、

自国の影響力を世界に広げようとしているのです。

 

そしてその中心にいるのが、他でもない習近平という指導者です。

一帯一路は、彼が考え、発表し、今も自ら推し進めている非常に大きな国家戦略であり、

その成り行きはこれからの世界情勢に大きな影響を与えていくことでしょう。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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