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社長&顧問ブログ

2025.8.26

令和の米騒動

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

昨日までは 戦後の闇米の話しでした。

 

今日は一旦戦後の話しから変わって、

令和の米騒動の話に進みます、、、。

 

令和のいま、なぜお米が不足し価格が高騰しているのか、

多くの人が首をかしげています。

 

昔のように戦争や占領期で食糧難に陥っているわけでもないのに、

スーパーに行けばお米の棚がすっからかんになったり、

価格が急に上がったりする現象が起きました。

 

その背景には気候の変化、需要の読み違い、政策の仕組みの遅れ、

そして全農や農協という組織の存在が深く関わっています。

 

まず短期的な原因から言えば、

2022年から2023年にかけて猛暑や高温障害によって稲の品質が悪化し、

収穫量が想定より減りました。

粒が白く濁ったり、等級が下がったりした米が多く、

食用に回せる分が限られたのです。

 

さらに新型コロナ後に訪日観光客が急増し、外食需要が盛り返し、

しかも小麦価格の高騰でパンや麺から米にシフトする動きが広がったため、

米の消費が想定以上に増えました。

 

政府は毎年10万トンずつ需要が減ると見込んでいたのに、

実際は逆に14万トンも増えた年があり、需給の予測が完全に外れたのです。

 

その結果、もともと余裕のなかった在庫が一気に薄くなり、

2024年の収穫分でも穴を埋められず、

2025年春には市場に出回る米が不足しました。

 

そこへ農家への前払い金である概算金が燃料や肥料の高騰で

引き上げられたことも加わり、集荷段階から価格が上がり始めました。

 

実際に2024年には1俵60キロあたり1万5千円台だった取引価格が、

2025年5月には2万7千円近くまで跳ね上がり、

その後も2万6千円台で高止まりしています。

 

政府は備蓄米を放出して対応しましたが、

当初はJAなどを通じて大口業者に入札で販売する形だったため、

消費者の店頭に届くまで時間がかかり、価格高騰を抑えられませんでした。

 

後になって直接小売に流す仕組みに切り替えたことで

ようやく落ち着き始めましたが、

この間に「どうして米がないのか」

と戸惑う国民の声が広がったのです。

 

ここで気になるのが、

米の流通を長年握ってきた全農や農協の仕組みです。

 

農協は戦後の1947年、

GHQの民主化政策のもとで農業協同組合法が制定され誕生しました。

 

戦時中には農業会という国策団体がありましたが、

戦後は任意加入の協同組合へと変わりました。

地域ごとの農協(JA)が農家を支え、県単位や全国単位で連合組織ができていきました。

その中心が1972年に誕生したJA全農で、

販売と購買の全国ネットワークを担います。

 

米や野菜や畜産物を全国規模で集荷し、スーパーや外食へ流すと同時に、

肥料や飼料、農機具などをまとめて購買して農家に供給する巨大な組織です。

 

さらにJA全中はグループ全体の調整役を務め

 

JAバンクやJA共済といった金融・保険機能も持ち合わせています。

 

つまり農協は農業生産から流通、金融や保険までを一手に引き受ける

“農村の生活インフラ”のような存在なのです。

 

この仕組みには光と影があります。

光の部分は、

小規模な農家でもスケールメリットを生かして有利に販売や購買ができることです。

例えば肥料を個人で買えば高くつきますが、

全農が一括して大量に仕入れるから価格を抑えられます。

また市場価格が不安定なときに、

全農の販売力や在庫調整が緩衝材となって

地域ごとの差を平準化する役割も果たしてきました。

さらにJAは金融や保険も担うので、

高齢化が進む農村では生活面まで支える存在でもあります。

 

一方で影の部分も大きく、

資材価格が海外より高止まりしている、流通経路が長く中間コストがかさむ、

非農協系の販路に挑戦する農家が不利になる、

統治が中央集権的で硬直しているといった批判があります。

 

実際に公正取引委員会が独占禁止法の適用を巡って注意喚起したこともありますし、

2015年の農協法改正ではJA全中の権限が縮小されるなど、

改革の圧力も強まってきました。

 

今回の米不足騒動でも、政府備蓄米がなかなか消費者に届かなかったのは、

入札を経てJAなどを通じる細長い流通経路が

ボトルネックになったためだと検証されています。

 

つまり農協と全農は、

農家と消費者双方にとって必要不可欠な存在であると同時に、

硬直した仕組みのために非常時には対応が遅れるリスクも抱えているのです。

 

日本のお米は長年、減反政策という形で需給を調整してきましたが、

気候変動の影響で猛暑や豪雨が頻発する時代に入り、

不作が続けば簡単に需給が崩れてしまいます。

 

減反で生産力を抑えてきた分、余裕がなくなり、

今回のような価格高騰につながったとも言えるのです。

 

まとめれば、令和の米不足と高騰は偶然の天候不順だけではなく、

長年の制度設計、農協や全農という流通の仕組み、

需要の変化への対応の遅れが複雑に絡み合って生まれた現象でした。

 

スーパーで米が普通に並んでいる日常は決して当たり前ではなく、

その裏には巨大な仕組みと過去から続く政策の積み重ねがあるのです。

 

今回の出来事は、平時の効率と非常時の機動力をどう両立するか、

農家の所得と消費者の納得価格をどう両立するかという、

日本の農業政策の根本的な課題を私たちに突き付けています。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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