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社長&顧問ブログ

2026.10.5

光雲番外編その2

高光産業株式会社

妹尾八郎です

 

昨日は 番外編で、

高村光雲という一人の彫刻家についての話しでした。

 

江戸の仏師として木彫を学び、

明治という大きな時代の変化の中でも、

自分の技を捨てなかった人です。

 

そこで、私はもう一つ気になりました。

 

上野公園の西郷隆盛像。皇居外苑の楠木正成像。

今でも多くの人が目にする大きな銅像です。

その制作に、

なぜ高村光雲が関わることができたのでしょう????。

 

明治政府に特別なつながりがあったのでしょうか???。

有力な政治家との人脈があったのでしょうか???。

 

調べてみると、話はそれほど単純ではありませんでした。

 

光雲は、突然大きな仕事を任されたわけではありません。

若い頃から一つ一つ作品をつくり、博覧会などで評価され、

少しずつ名前を知られるようになっていきました。

 

そして東京美術学校で彫刻を教える立場となり、

1890年には帝室技芸員にも選ばれます。

 

つまり、

「あの人なら任せられる」

という信頼を、長い年月をかけて積み重ねていったのです。

 

私はここに、

仕事というものの大切な部分があるように思います。

 

私たちは大きな仕事をした人を見ると、

「何か特別な人脈があったのだろう」

と思ってしまうことがあります。

 

もちろん、

縁は大切です。人との出会いも大切です。

 

しかし、良い縁が巡ってきた時に、

「あの人なら大丈夫だ」

と思ってもらえるだけの仕事を、

それまでにしていなければなりません。

 

光雲の場合、

先にあったのは政治的な力ではなく、

職人として積み上げてきた信用だったのだと思います。

 

上野公園の西郷隆盛像は1898年に除幕されました。

西郷隆盛本人の人物像の制作を担当したのが、

高村光雲です。

 

しかし面白いのは、西郷さんの横にいる犬です。

あの犬まで光雲がつくったわけではありません。

 

犬を担当したのは、動物彫刻を得意とした後藤貞行です。

 

つまり、一つの像に見えても、

実際には複数の優れた職人の力が合わさっています。

 

そして、

西郷隆盛と犬の組み合わせにも理由があります。

 

西郷は大変な犬好きだったと伝えられています。

特に狩りを好み、猟犬を連れて山へ出かけました。

有名なのが薩摩犬の「ツン」です。

 

ツンは、ウサギ狩りが得意な犬だったと伝えられています。

ただし、上野の西郷像の横にいる犬が、

ツンそのものを直接モデルにしたわけではありません。

 

別の薩摩犬を参考に制作されたとされています。

 

それでも、あの犬を見ていると、

西郷隆盛という人物が少し身近に感じられます。

 

明治維新の英雄。西南戦争の指導者。歴史の教科書に出てくる大人物。

しかし、

その横に犬が一匹いる。軍服姿でもありません。

犬を連れ、草履姿で歩いている。

 

そこには、「歴史上の偉人・西郷隆盛」だけではなく、

犬をかわいがり、山へ出かけ、

狩りを楽しんだ一人の人間の姿があります。

 

人はどれだけ偉くなっても、人間です。

好きなものがあります。

 

楽しみにしていることがあります。

心が安らぐ時間があります。

案外、その人らしさは、大きな功績より、

そんな小さなところに出るのかもしれません。

 

一方、皇居外苑の楠木正成像にも光雲は関わりました。

この像は、

住友家が別子銅山開坑200年を記念して企画し、

東京美術学校に制作を依頼したものです。

 

完成後、宮内省へ献納されました。

 

つまり、「明治政府が直接、高村光雲一人に命じた」

という話ではありません。

 

当時の東京美術学校には、日本を代表する美術家たちが集まっていました。

そして、

その中の中心的な彫刻家の一人として、光雲が制作に関わったのです。

 

ここでも、私は同じことを感じます。

 

大きな仕事は、

ある日突然、何もないところからやって来るわけではありません。

その前に、

小さな仕事があります。人に見られていない仕事があります。

名前も出ない仕事があります。そこで手を抜かずに積み重ねていく。

すると、少しずつ、「あの人に任せよう」という信用が生まれます。

 

12歳で木を彫り始めた少年が、毎日毎日、腕を磨き、

時代の変化に合わせて自分も変わり、それでも技だけは捨てなかった。

その何十年もの積み重ねの先に、

西郷隆盛像や楠木正成像という大仕事があったのです。

 

私はここに、とても大切なことがあると思います。

 

特別な仕事をしたから、特別な人になったのではない。

普通の仕事を、長い間丁寧に積み重ねたから、

やがて特別な仕事を任された。

 

これは、

今の私たちの仕事にも同じことが言えるのではないでしょうか。

 

今日する仕事は、小さいかもしれません。

誰にも褒められないかもしれません。

名前も残らないかもしれません。

しかし、その一つ一つが信用になります。

 

人は、ある日突然信用されるのではありません。

約束を守る。手を抜かない。頼まれた仕事を最後までやる。

 

そうした小さな積み重ねが、

「あの人なら任せられる」という一言につながります。

そして、

その一言が次の仕事を連れてくる。

 

高村光雲の人生を知ると、

仕事というものは、そうやって大きくなっていくのだと思います。

 

次に上野公園へ行ったら、

私は西郷さんだけではなく、

その横にいる犬も見てみたいと思います。

 

そして、

西郷隆盛という人の人間らしい一面を思い、

その姿を形にした光雲や後藤貞行という

職人たちのことも思い出すでしょう。

 

そうすると、今まで何気なく見ていた銅像が、

ただの観光名所ではなくなります。

 

そこに何人もの人生が見えてきます。

 

今回の話しは、

根津神社の一軒の家から始まりました。

 

「これは何だろう」という小さな疑問でした。

それが鴎外へ、漱石へ、幸田露伴へ、啄木へ、高村光太郎へ、

そして高村光雲へとつながってきました。

 

一つ疑問を持つたびに、また次の人の人生が現れます。

 

知れば知るほど、いつもの景色が違って見えてくる。

それが、歴史を知る楽しさなのかもしれません。

 

明日は では 何故 あの場所で???

の話に続く、、、、。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/