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社長&顧問ブログ

2025.10.10

巌谷小波

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

昨日までは

桃太郎と金太郎の話しでした。

 

しかし 何故多くの人がこの話を知っているかと言えば

この話を童話にした方がいたからです。

今日は この話に進みます、、、。

 

私たちがよく知っている「桃太郎」や「金太郎」のお話。

桃から生まれた桃太郎が犬・猿・雉をお供にして鬼ヶ島へ行き、

悪い鬼を退治して宝物を持ち帰る話や、

山で動物たちと力比べをして、やがて立派な侍になる金太郎の話。

 

どちらも日本人なら誰もが一度は聞いたことのある昔話です。

しかし実は、これらの物語を今のようにわかりやすく書き直し、

子どもたちにも楽しく読めるようにした人物がいたのです。

 

その人こそ、明治時代の文学者・巌谷小波です。

彼は日本で最初に「児童文学」という分野を切り開いた人物であり、

いわば日本の“童話の父”とも呼ばれています。

 

巌谷小波が生きたのは、1870年(明治3年)から1933年(昭和8年)まで。

文明開化の波が押し寄せ、日本の暮らしや価値観が急速に変わっていく時代でした。

 

父親の巌谷修は学問に優れた文化人で、家にはたくさんの書物があり、

小波は幼い頃から文学や芸術に囲まれて育ちました。

 

そんな中で小波が感じたのは、

「日本の子どもたちに、心の栄養になるような物語がほとんどない」という現実でした。

 

当時の教育は、漢文や教訓書が中心で、

楽しみながら学ぶような読み物はありませんでした。

子どもたちが夢を持てる本もなく、ただ知識を詰め込むばかりの教育に、

小波は違和感を覚えます。

 

そこで彼は決意します。

「日本には昔から素晴らしいお話がたくさんある。

これを子どもたちにも分かりやすく、美しい日本語で伝えたい」と。

 

こうして彼は、全国各地に伝わる昔話を集め、

それを自分の言葉で再構成し始めました。

 

その成果が『日本昔噺』というシリーズとしてまとめられます。

 

ここで小波は、「桃太郎」や「金太郎」「浦島太郎」「花咲爺」などを、

明るく、優しく、そして教育的に書き直しました。

 

例えば桃太郎の話は、地方によって登場する動物や出来事が違っていましたが、

小波はそれらを整理し、誰が読んでも分かりやすい一本の物語にまとめました。

 

昔の口承では、鬼を倒すことが復讐や略奪に近い意味を持つこともありましたが、

小波はそれを「正義のための鬼退治」として描きました。

 

桃から生まれた子どもが、年老いた夫婦に育てられ、

仲間と力を合わせて悪を退治し、村に平和をもたらす──

 

そこには「親孝行」「勇気」「協力」「正義」といった

子どもに伝えたい教えが込められています。

 

金太郎の話も同じです。平安時代の武士・坂田金時の伝説をもとに、

力持ちで心優しい少年として描き直しました。

 

山で動物たちと仲良く遊びながら成長し、やがて立派な侍となる金太郎の姿は、

努力すれば誰でも立派になれるという明治時代の理想と重なります。

 

こうした小波の再話によって、昔話はただの民話から、

「子どもの心を育てる物語」へと生まれ変わりました。

 

小波の文体はとてもやさしく、音の響きを大切にしていました。

声に出して読んでも美しく、耳で聞いても楽しい。

そのため、学校の教材や読み聞かせにもぴったりでした。

 

明治30年代に刊行された『日本昔噺』シリーズは全国で大ヒットし、

子どもたちの愛読書となりました。

 

小波の仕事は、日本の教育や文化に大きな影響を与えます。

 

当時、教育の中心は「西洋化」でしたが、

彼は「日本の昔話には日本人の心がある」と考えました。

文明が進んでも、心の豊かさを忘れてはいけない──

そう信じていたのです。

 

また彼はアンデルセンやグリムなど、西洋の童話も翻訳し、

日本の子どもたちに紹介しました。

 

けれども、それらをただ真似るのではなく、

日本語の美しさや感情の細やかさを活かして書き直しました。

 

彼にとって児童文学とは、知識を教えるためのものではなく、

人の心を育てるための文学でした。

 

その信念は次の言葉に表れています。

「児童文は教育の飾りではなく、教育の根である」。

 

つまり、勉強や知識の上に成り立つ教育ではなく、

物語を通して生き方を学ぶことこそが、人をつくる基礎だという考えです。

 

晩年まで小波は創作を続け、多くの若い作家を育てました。

彼の功績を称えて、

戦後には「巌谷小波文芸賞」も設けられ、今日まで続いています。

 

私たちが当たり前のように知っている「桃太郎」や「金太郎」は、

実は彼のような人の努力によって形づくられたものなのです。

 

昔から語られてきた物語を、

現代の子どもたちが読んで理解できるように書き直した巌谷小波。

 

その優しい言葉と豊かな想像力が、物語を通して日本の心を今に伝えています。

 

百年経った今も、教科書や絵本の中で息づく彼の物語は、

世代を超えて「生き方の手本」として読み継がれています。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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