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社長&顧問ブログ

2025.11.25

新嘗祭

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

 

昨日までは 勤労感謝の日は新嘗祭だったと言う話でした

今日は この新嘗祭についての話に進みます、、。

 

新嘗祭という儀式は、天皇がその年に実った新しいお米を神々に供え、

自らも口にするという日本でもっとも古い祭祀の一つであり、

日本文化の根底にある「実りへの感謝」を象徴する行事です。

 

勤労感謝の日の由来となった新嘗祭を深く見ていくと、

単なる農耕儀礼を超え、なぜ日本人が古代から現代まで一貫して

自然と人の営みに感謝し続けたのかが見えてきます。

 

まず新嘗祭とよく混同される儀式に「大嘗祭」があります。

 

名前は似ていますが、大嘗祭は天皇が即位して初めて行う一度きりの特別な新嘗祭で、

即位の大礼の中でも最も神聖で重要な儀式とされています。

 

新嘗祭が毎年行われる“恒例の祭祀”であるのに対し、

大嘗祭は新しい天皇が国家と民を預かる者として、

初めて自らの身をもって実りを受け取り、神々に誓いをたてる儀式なのです。

 

この違いを知ると、

日本の祭祀が

いかに丁寧に季節のめぐりと国家の秩序を結び付けてきたかがよく分かります。

 

そして新嘗祭の核心には、

天皇が新穀を“自ら食す”という非常に象徴的な行為があります。

これは単に初物を味わうという意味にとどまらず、

古代の日本人にとって特別な意味を持ちました。

 

日本の神話では、食べ物は神々から授かった生命そのものであり、

人がそれを口にするということは神々の力を自分の中にいただくという行為でした。

 

天皇はその中心に立ち、

神々から民へと生命の恵みをつなぐ役割を担う存在とされていたため、

天皇が自ら新穀を食す行為は、神の恵みを身体に宿すと同時に、

その年の実りを国民と共有する象徴的な意味を持ったのです。

 

さらに新嘗祭が古代から現代まで一度も途切れることなく続いてきた理由は、

単に宗教儀礼であるからではありません。

 

日本は長い間、農耕を中心に生活を営んできた社会であり、

自然のめぐりと人の暮らしが密接につながっていました。

雨が降りすぎても不足しても作物は育たず、

台風や干ばつがあればたちまち食料が危機に陥ります。

 

自分の力ではどうにもできない自然の中で、

人々は「生かされている」という感覚を強く持ち、

それが恵みへの感謝の文化として定着しました。

 

新嘗祭は、そうした日本人の心を象徴する儀式であり

「今年も実りをいただけた」という事実そのものに、

深い祈りと感謝を捧げる行事だったのです。

 

この精神は天皇の祭祀という形式を通して国家全体に広がり、

庶民も村ごとの収穫祭を行い、家族の健康と来年の豊作を祈りました。

 

つまり新嘗祭は宮中の行事でありながら、

日本全体の農耕文化を支える共通の“心の柱”のような役割を果たしていたのです。

 

また日本人の感謝の文化は、ただ「ありがとう」と言葉にするだけでなく、

自然の恵みを神聖なものとし、食べ物を粗末にしない、初物に感謝する、

いただきますと手を合わせるなど、生活の細部にまで浸透しています。

 

これは世界的に見ても珍しい文化であり、

食べ物を神様の賜物として扱う日本独特の感性が、新嘗祭を支えてきたと言えます。

 

現代社会では農業の比重は小さくなり、スーパーには一年中あらゆる食材が並び、

季節感や収穫の有り難さが薄れがちです。

 

しかし勤労感謝の日として受け継がれた十一月二十三日には、

新嘗祭の精神がしっかりと息づいています。

 

現代の私たちは農作物に限らず、あらゆる働きによって生活が支えられています。

 

電気をつくる人、道を整備する人、商品を運ぶ人、子どもを育てる人、病気を看てくれる人、そのすべての働きが「実り」であり「恵み」であるという考え方は、

新嘗祭の感謝の思想とまったく同じ流れの中にあります。

 

勤労感謝の日が「働く人に感謝する日」とされているのは、

戦後の価値観の転換だけではなく、

古代から続く新嘗祭の「恵みに感謝する」という精神が

形を変えて現代に受け継がれているためです。

 

つまり勤労感謝の日には、働く人への感謝と同時に、

私たちの生活を支えるすべての“実り”に

改めて気付くという深い意義が込められているのです。

 

そして新嘗祭が現代にも残している最も大きな財産は

「感謝は祈りから始まる」という日本人の心の在り方です。

 

天皇がたった一粒の米にも恵みを感じ、深々と頭を垂れるように、

私たちも日々の生活の中で

「あたりまえ」を「有難い」と感じる心を持つことができます。

 

新嘗祭は単なる伝統行事ではなく、日本人の精神の土台とも言える文化であり、

その感謝の思想は勤労感謝の日を通して、

これからも静かに生き続けていくのです。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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