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社長&顧問ブログ

2025.12.3

旧暦

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

今月は師走ですね

この暦の読み方について 今日は進みます、、

 

日本で一月から十二月までにそれぞれ固有の名前が付けられているのは、

日常生活で何気なく使っているにもかかわらず、

その起源や成り立ちを振り返るとたいへん長い歴史の積み重ねによるものです。

 

現在私たちが使っている一月から十二月という表記は

明治時代以降に定着した近代的な書き方ですが、

それ以前の日本では「睦月」「如月」「弥生」「卯月」などの

伝統的な和風月名が長く使われてきました。

 

これらは誰か一人がまとめて作ったものではなく、

古代の人々が自然の移り変わりや農耕の節目、生活の風習などを背景に、

何百年もの時間をかけて形づくってきた言葉です。

 

和風月名の原型が整い始めたのは奈良時代と言われていますが、

さらに遡ると中国の暦の影響を受けながら、

律令国家が成立した七世紀後半の頃から徐々に使われるようになりました。

 

たとえば一月の「睦月」は

「親族が集まって睦み合う月」という意味が広く知られていますが、

他にも「新しい年に草木が芽吹く“むつき”」が語源という説もあります。

 

二月の「如月」は「衣を更に着る“衣更着(きさらぎ)”」から来たとされ、

寒さが厳しい時期を表した日本らしい発想です。

 

三月の「弥生」は「いよいよ草木が生い茂る“いやおい”」が元で、

農耕に密着した日本人らしい自然観が反映されています。

 

四月の「卯月」は卯の花が咲く頃という説がよく知られ、

五月の「皐月」は田植えが始まる「早苗月(さなえづき)」が転じたと言われます。

 

以降の「水無月」「文月」「葉月」「長月」「神無月」「霜月」「師走」も

同じく自然や生活、神事、農作業を背景にした美しい季節語で、

これらがいつ誰が統一的に決めたというものではなく、

古代の言語と生活の中から長い時間をかけて熟成されてきた文化的資産なのです。

 

では、こうした月名が庶民にまで広く使われるようになったのはいつ頃かといえば、

それは平安時代から中世にかけて、

和暦が一般生活の中で浸透していった時期と重なります。

 

特に寺社の暦や年中行事、農作業の暦は庶民の生活に深い影響を与えており、

「水無月」「葉月」などの名称は農民や町人の間でも普通に使われていました。

 

戦国時代のような乱世においても、

戦国武将の手紙や文書には「長月○日」「霜月○日」といった記載が多く見られ、

庶民側でも寺子屋や地域の共同体が維持されていたため、

月の呼び名が失われることはありませんでした。

 

むしろ戦国時代は年貢や収穫の管理が重要だったため、

農民たちも農作業と直結した季節感のある月名を日常的に使っていたのです。

 

もちろん当時は現代のように

全国一律で教育が行き届いていたわけではありませんから、

読み書きが十分にできない人も多かったものの、

口伝えで季節を示す言葉として月名が生活に溶け込んでいたことは

文献や民俗学の研究で確認されています。

 

では明治以降、なぜ

「一月・二月・三月」のような数字の月名に変わったのかといえば、

これは明治政府が西洋式の太陽暦(グレゴリオ暦)を採用したことで、

暦のしくみを国際標準に合わせる必要があったためです。

 

明治五年十二月三日が突然「明治六年一月一日」になった有名な改暦では、

政府が官報や公式書類の表記を「一月・二月」に統一したことから、

庶民の間でも急速に数字の月名が広まりました。

 

しかし興味深いのは、近代になった後でも和風月名が完全に消え去ったわけではなく、

俳句や和歌、神社行事、祭礼、茶道や華道の歳時など、

伝統文化の中では今日まで生き続けていることです。

 

「師走」などは特に一般生活でもよく使われ、

季語としても季節の味わいを深く残しています。

 

こうして見ていくと、日本の月名は単なるカレンダーの記号ではなく、

自然のリズムや農耕の知恵、古代の思想や暮らしが積み重なって

作り上げた文化の結晶であり、

どの時代の人々も季節と共に生きる感性を大切にしてきた証拠と言えます。

 

誰が作ったというのではなく、

自然の時間の流れを感じながら

暮らしてきた多くの名もなき日本人の感性が編み出した言葉であり、

それが千年以上にわたって途切れることなく受け継がれ、

明治の改暦を経て現代の形になったのです。

 

今私たちが何気なく「師走」「睦月」と口にする時、

そこには古代から中世、そして近代まで長く連なる日本人の生活と思考の歴史が

静かに息づいています。

 

 

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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