
EXECUTIVE BLOG
2025.6.22
高光産業株式会社
妹尾八郎です。
昨日までは 楠木正成 正行親子が 忠義の鑑だったと言う話でした。
この事を明治政府は上手く利用したのでは と言う話に今日は進みます。。。
日本の歴史の中で、明治時代というのは
江戸時代の長い武士の時代が終わり、新しい国づくりが始まった大きな転換点でした。
その明治政府が国の柱として大切にしたのが「天皇を中心とした国」です。
この新しい体制をつくるにあたって、
明治政府は歴史の中にある物語や人物を上手く取り上げ、
国民の心を一つにしようと考えました。
その時、大きな役割を果たしたのが、南北朝時代の南朝を正当と認めるという決断でした。南北朝時代というのは、天皇が二人存在していた時代で、
南朝と北朝に分かれて争いが続いていました。
もともと江戸時代を含む長い間は北朝の天皇が続いていたのですが、
明治に入ってから突然、南朝こそが本当の天皇の流れだったと公式に認められたのです。
これは歴史の大きな転換でもありました。
この決断は、単に歴史の見直しというだけでなく、もっと大きな意味を持っていました。
明治政府は、天皇を国の中心とした体制を築こうとしていましたが、
それを国民に納得してもらうには、
歴史の中で天皇に命をかけて仕えた忠義の人々の存在を強く打ち出すことが必要でした。
その象徴として選ばれたのが、楠木正成とその子・正行親子でした。
彼らは南朝方として、天皇のために最後まで戦い、命を落とした武将でした。
特に正成は、後醍醐天皇の信頼を一身に受け、
湊川の戦いで戦死するまで忠義を貫いた人物として、後の時代まで語り継がれてきました。
明治政府は、この楠木親子を「忠義の鑑」として取り上げ、学校の教科書や軍の教練、
さらには銅像などを通して全国にその忠義の精神を広めていきました。
皇居前に建てられた楠木正成の銅像は、その象徴の一つです。
天皇のために命をかけるという精神は、美しい忠義の心として、
明治時代の教育や思想の中にしっかりと根付きました。
これは、国民の心に天皇への敬意と忠誠を育てる役割を果たしたのです。
このようにして「天皇中心の国づくり」は、
歴史の人物たちの美しい物語と結びつけられながら進められていきました。
ところが、こうした思想が強まる中でそれをさらに一歩進めていったのが
「軍」の存在でした。
軍もまた、天皇に忠義を尽くす組織として育てられました。
兵隊は「天皇の兵士」とされ、その行動は天皇への奉仕と位置づけられました。
教育勅語にもある「一旦緩急あれば義勇公に奉じ」つまり、国の危機には身をささげる、
という考え方が広まったのもこの流れの中です。
やがてこの考え方は、次第に軍の力を強めていく土台となっていきました。
国民の間にも、「天皇のために尽くすことは尊いこと」という気持ちが深く根づいた結果、軍部が国家の中心で堂々と振る舞うことが可能になっていきました。
本来、政治は議会や内閣が中心となって進めるものですが、
軍は「天皇の直属」とされていたため、
政治の外からでも大きな力を持てるようになったのです。
軍が「自分たちは天皇の意志を体現しているのだ」と主張すれば、
その正当性が社会的に認められるようになっていきました。
このようにして、明治政府が進めた「天皇中心の国づくり」は、
初めは国を一つにまとめ、国民の気持ちを鼓舞するための手段だったのですが、
それがやがて軍の力を大きくしすぎる結果につながったとも言えます。
つまり、忠義や敬意という気持ちが強すぎて、
それが軍の行動を止められないほどの影響力を持つようになってしまったのです。
もちろん、
明治政府自身がこのような展開を初めから望んでいたわけではないと思われますが、
歴史の流れの中で、意図しない方向に物事が進んでしまった面もあるのです。
こうした流れをふり返ってみると歴史や人物の使い方、
そして「忠義」という言葉の持つ力の大きさを感じずにはいられません。
楠木正成や正行の忠義の精神は、本来とても尊いものです。
けれどもそれが時代や立場によって利用され、別の意味を持つようになることもあるのです。
明治の日本は、近代国家として生まれ変わるために多くの工夫と努力を重ねてきましたが、その中で天皇への忠義や軍の役割というテーマは、複雑な形で歴史に刻まれていきました。
今の私たちにできることは、そうした歴史の流れをよく見つめ、
何が大切で、何に気をつけるべきかを学び取ることです。
忠義や敬意という気持ちは、時代が変わっても人の心を動かす力を持っています。
それだけに、その力をどのように使い、どこに向けるのかがとても大切になってきます。
歴史を学ぶことは、過去を知るだけでなく、
これからの生き方を考える手がかりにもなるのです。
楠木親子のように、誠実で真っ直ぐな生き方に触れることで、
今を生きる私たちもまた、自分のあり方を見つめ直すことができるのではないでしょうか。
明日は 軍部が権力をどのようにして握って行ったのか????
の話に
続く、、、。