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2026.2.21
高光産業株式会社
妹尾八郎です。
昨日までは 天照大神から神武天皇までの物語の中で
天照大神の孫の話しは出てきますが、 子供も話は目立っては出てこない
と言う話でした。
中身を読むと 良く辻褄があってるなと思ってしまいますが
一体 この物語誰が考えたのか???
の話に 続きます、、、。
天照大神からニニギノミコト、そして神武天皇へと続く系譜の物語は、
日本神話の中心軸をなす物語です。
この系譜が現在のような形で私たちに伝わっているのは、
8世紀初頭に編纂された二つの史書によります。
すなわち、712年成立の『古事記』と、720年成立の『日本書紀』です。
『古事記』は太安万侶が編纂し、
『日本書紀』は舎人親王らが中心となってまとめました。
この二書は、単なる神話集ではなく、
国家の成立と天皇の正統性を示すために体系化された「国家的歴史書」でした。
まず理解しておくべきことは、
彼らがゼロから物語を創作したわけではないという点です。
古代日本には、各地の豪族が祖先神を語る氏族伝承があり、
宮廷には代々語り継がれてきた口承の物語がありました。
これらは「帝紀」や「旧辞」と呼ばれる形で
断片的に存在していたと考えられています。
編纂者たちは、それらを整理し、
矛盾を調整し、国家の歴史として一貫性のある構造に再構成しました。
つまり神話とは、個人の空想ではなく、
長い時間をかけて蓄積された伝承を、国家の視点で編集した結果なのです。
では、なぜ天照大神の「子」よりも
「孫」であるニニギノミコトが強調される構造になったのでしょうか。
ここには当時の政治状況が深く関わっています。
8世紀初頭、日本は律令制度を整え、中央集権国家としての体制を固めつつありました。
唐にならった国家体制を築く中で、
天皇の地位を神聖かつ絶対的なものとして理論づける必要がありました。
そのため、「天上の神の血統が地上に降り、
そこから王権が始まった」という物語は極めて重要だったのです。
天照大神は高天原の最高神です。
しかし高天原は天上世界であり、そこに留まっていては地上統治の物語にはなりません。
物語の焦点は「地上統治の開始」にあります。
そこで重要になるのが天孫降臨です。
天照大神は地上を治めるために孫のニニギノミコトを派遣します。
実際に地上に降り立ち、統治の起点となる存在がニニギです。
ここに物語の転換点があります。
ニニギの父である天忍穂耳命は、血統上は非常に重要です。
天照大神の直系の子であり、正統な後継者です。
しかし彼は地上に降りることなく、役割としては「血統をつなぐ存在」にとどまります。
物語としての劇的展開を担うのは、地上に降臨し、新しい統治を始めるニニギです。
したがって、物語構造上、強調されるのはニニギになります。
これは偶然ではなく、編集上の設計と見ることができます。
さらに、ニニギから神武天皇へと続く系譜は、地上の歴史へと直結します。
ニニギの子孫である山幸彦(火遠理命)、その子の鵜葺草葺不合命を経て、
神武天皇が誕生します。
神武天皇は日向から東征し、大和を平定して即位したとされます。
ここで神話は「王権の現実的起点」と結びつきます。
天上の神話世界から地上の歴史世界へと橋が架けられる瞬間です。
この橋渡しの要がニニギであり、
そこから神武へと流れが続く構造になっています。
また、『日本書紀』の特徴として、複数の異伝が併記されている点が挙げられます。
同じ出来事に対して異なる伝承が紹介されることがあり、
神話が当初から一枚岩ではなかったことが分かります。
地方ごとに異なる神話体系や豪族の祖先神伝承が存在しており、
それらをすべて排除するのではなく、
一定程度残しながら国家史として統合したのです。
この編集作業は、単なる文学的作業ではなく、
政治的配慮を伴う高度な調整でした。
「誰がこの神話を考えたのか」と問われれば、
最終的な形を整えたのは太安万侶や舎人親王らです。
しかし、その背後には天武天皇以来の国家構想がありました。
天武天皇は壬申の乱で勝利し、
皇統の正統性を明確にする必要に迫られていました。
その流れの中で、皇室の祖神を明確にし、
系譜を体系化する作業が始まったと考えられます。
したがって神話編纂は、一代の思いつきではなく、
政治的安定を目指す長期的構想の一環でした。
結果として、「天照からいきなりニニギに見える」構造が生まれます。
実際には天忍穂耳命が存在し、血統は連続していますが、
物語の焦点は「地上統治の開始」にあるため、
読者の印象としては天照からニニギへ直接つながるように感じられます。
これは王権の起点を明確にするための編集上の工夫です。
このように、日本神話は単なる幻想的な物語ではありません。
それは地方伝承、氏族の誇り、宮廷の記憶、
そして国家形成の政治的意図が重なり合って生まれた「国家的物語」です。
神話は固定された原作を持つ作品ではなく、
時代の要請に応じて選び取られ、整理され、再構成されたものです。
天照大神からニニギ、そして神武天皇へと続く系譜は、
天上の神聖性と地上の統治権を結びつけるために設計された、
極めて戦略的な物語構造だったといえるでしょう。