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社長&顧問ブログ

2025.4.21

野村望東尼

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

昨日までは 福岡藩の勤王の志士の一人ともいえる 喜多岡勇平の話しでした。

 

今日は 彼を含めて 勤王の志士を助けた 野村望東尼の話に進みます。

 

野村望東尼(のむら・もとに)は、幕末という日本史上きわめて激動の時代に、

志士たちを陰で支え続けた福岡藩出身の女性です。

1814年、福岡藩士・林三右衛門の娘として生まれ、名は林信といいました。

若くして藩士・野村新三郎に嫁ぎ、武家の妻として静かな暮らしを送っていましたが、

その人生が大きく転じる契機となったのが、安政年間に夫を亡くしたことでした。

この喪失は、望東尼にとって生活上の打撃であると同時に、

「家庭という枠組み」から自らを解放し、新たな人生を歩むきっかけともなったのです。

 

この時期に彼女は剃髪し、出家して「望東尼」と名乗るようになります。

一見すると悲嘆に暮れた末の逃避のようにも見えますが、

実際にはこの出家は極めて能動的で、時代の変化に鋭く反応した上での意志ある

「再出発」だったのです。

彼女は、身を引くだけではなく、「世を見据えて関わる」という立場を選んだのです。

 

では、なぜ一介の未亡人であった彼女が、

倒幕運動を推進する若い志士たちと深く結びつくようになったのでしょうか??。

 

その背景には、望東尼がもともと持っていた「文化人としてのネットワーク」がありました。彼女は香川景樹の門下で和歌を学び、多くの門弟を抱える教養人でもありました。

和歌をはじめとする詩歌や学問は、

当時の尊王攘夷を志す若者たちの多くにとって精神的な支柱であり、

志士の中には望東尼の歌を愛誦する者も少なくありませんでした。

 

つまり、彼女と志士たちは、政治的立場というよりも、

まず「精神文化の仲間」として繋がっていたのです。

 

そのような関係性の延長線上で、

彼女は福岡藩内で倒幕思想を掲げる若者たちと親しくなっていきます。

とりわけ月形洗蔵や平野国臣、宮部鼎蔵らとは深い交流を持ち、

彼らが追われる立場になってからも山荘を開放し、命を懸けて匿いました。

これは単なる友情や同情からではなく、

「自分がやらなければ誰がやるのか」という、強い使命感と覚悟に基づくものだったのです。

 

さらに見逃せないのが、望東尼が持っていた倫理観と正義感です。

彼女は「正しいことを正しいと言えない社会」に対して強い怒りを抱いていました。

安政の大獄では、尊皇思想を持つ多くの志士が

理不尽に処刑されるという事態が相次ぎました。

 

望東尼は、こうした「時の権力による抑圧」を目の当たりにし、

女として、また教養人としての良心から深い憤りを感じたと伝えられています。

社会的に弱い立場にあった未亡人という境遇もまた、

彼女の中に「見捨てられる者の痛み」を育み、

それが「誰も見捨てない」という倫理的な行動に繋がったのではないでしょうか。

 

また、当時の福岡藩は佐幕派と倒幕派が藩内で激しく対立し、

志士たちは藩からすら庇護されない状況に追い込まれていました。

そのなかで望東尼は、自らの山荘を危険に晒してまでも、命がけで志士たちを匿います。

 

「誰も守らないなら、自分が守る」という決意に満ちたその行動は、

武家社会において女性が果たしうる役割を超えたものでした。

 

こうして見ていくと、望東尼が志士たちを支援するようになったのは、

単なる偶然ではなく、いくつもの要因が折り重なった「必然」だったと言えるでしょう。

夫の死によって生活が一変し、精神的な目覚めを得たこと。

和歌という教養を通じて志士たちと心を通わせていたこと。

正義感と倫理観から、時代の不正に立ち向かおうとする勇気を持っていたこと。

そして、混乱する福岡藩内の現実が、彼女に「行動するしかない」と決意させたこと。

 

そのすべてが、

文化人であった彼女を、いつしか維新を陰で支える実践者へと変えていったのです。

 

望東尼の人生は、

「教養ある女性が時代のうねりに応えて立ち上がった」稀有な例です。

ただの志士の支援者ではなく、時代の本質を見抜き、命をかけて行動したその姿は、

幕末におけるもう一つの維新史とも言えるのではと思います。

 

男性中心の歴史に埋もれがちな女性の行動が、いかに大きな意味を持ち得るのか?

望東尼の生涯は、今なお多くの人に問いかけるものを秘めているのではと思います。

 

時代は同じく 長崎でも活躍した女性がいましたね、、、

 

明日は

その方の話に

続く、、、、、。

 

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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