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2026.1.5

門松

高光産業株式会社

妹尾八郎です。

 

 

松の内という言葉は、お正月の時期に自然と耳にするものですが、

その意味や由来を正確に説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。

 

松の内とは、年神様をお迎えしてお祀りし、その御神徳を頂く期間のことを指します。

 

単に「正月の余韻が残る期間」という感覚で使われがちですが、

本来は日本人の信仰心や自然観、時間の捉え方が色濃く反映された、

大変意味の深い言葉なのです。

 

松の内という言葉に含まれる「松」は、門松に象徴されるように、

年神様がこの世に降りて来られる際の依代、

つまり目印となる神聖な存在を意味しています。

 

松は一年を通して青々と葉を保ち、厳しい冬にも枯れないことから、

古来より不老長寿や生命力の象徴とされてきました。

 

その松を家の門口に立てることで、

「どうぞこの家にお入りください」

と年神様をお招きする心を形にしたのが門松であり、

その門松を立てている期間こそが松の内なのです。

 

年神様とは、お正月に各家庭を訪れ、

その一年の五穀豊穣、家内安全、無病息災などを授けてくださる神様であり、

祖霊と結びついた存在とも考えられてきました。

 

つまり松の内は、新しい年の始まりにあたり、

神様と人とが共に過ごす特別な時間帯であったと言えます。

 

歴史をたどりますと、

松の内の考え方は平安時代にはすでに定着していたことが分かります。

 

宮中では正月行事が細かく定められており、

年の始まりから一定期間は特別な「ハレ」の時間として扱われていました。

 

貴族たちはこの期間、年始の挨拶や宴を行い、

和歌を詠み、神仏に祈りを捧げながら新年の安泰を願っていたのです。

 

やがてこうした習慣は武家社会にも広がり、

さらに江戸時代になると庶民の間にも深く根付いていきました。

 

江戸時代の松の内は、現在よりも長く、一般には一月十五日までとされていました。

これは小正月と呼ばれる日までを含めて、

年神様をお祀りするという考え方に基づいています。

 

小正月には粥を食べて一年の健康を祈ったり、豊作を占う行事が行われたりと、

正月行事の締めくくりとしての意味合いがありました。

 

そのため、門松やしめ縄も一月十五日まで飾られ、

松の内は半月ほど続くのが当たり前だったのです。

しかし時代が下るにつれて、松の内の期間には地域差が生まれていきます。

 

特に大きな転機となったのが江戸時代後期から明治期にかけての社会の変化です。

江戸では一月七日をもって松の内とする習慣が広まりました。

これは武家社会の規律や町人文化の発展と関係があり、

早く日常生活に戻る必要性が背景にあったと考えられています。

 

一方、関西を中心とした地域では、

従来通り一月十五日までを松の内とする風習が残り、

現在でもその名残を見ることができます。

 

この違いは単なる日程の差ではなく、時間の流れをどのように感じ、

どこまでを「特別な時間」と捉えるかという

文化的感覚の違いを表しているとも言えるでしょう。

 

松の内が終わると、門松やしめ縄は外されますが、

これは年神様を粗末に扱うという意味ではありません。

むしろ、一定期間丁重にもてなし、

無事にお送りするという大切な区切りの儀式なのです。

 

外した門松は、どんど焼きなどでお焚き上げされ、

その煙とともに年神様が天にお帰りになると考えられてきました。

 

このように、松の内は

「迎えて、共に過ごし、送り出す」という一連の流れの中に位置づけられています。

 

現代では、正月休みが短くなり、

松の内という言葉も形式的に使われることが多くなりましたが、

その根底にある精神は今も変わりません。

 

新しい年を迎えられたことへの感謝、これから始まる一年への願い、

そして日々の暮らしが神仏や自然の恵みに支えられているという自覚が、

松の内という期間には込められているのです。

 

忙しい現代だからこそ、松の内を単なる「正月の名残」として過ごすのではなく、

少し立ち止まって心を整え、

新しい一年を

どう生きていくのかを静かに考える時間として捉えることには大きな意味があります。

 

門松が立っていなくても、しめ縄を飾らなくても、

心の中で年神様をお迎えし、感謝と願いを新たにすることは誰にでもできます。

 

松の内とは、暦の上の期間であると同時に、

人の心の持ちようを表す言葉でもあるのです。

 

そのことを意識して新年の日々を過ごすとき、

松の内は現代においてもなお、

生きた文化として私たちの生活の中に息づいていくのではないでしょうか。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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