
EXECUTIVE BLOG
2025.12.30
高光産業株式会社
妹尾八郎です。
昨日までは 除夜の鐘の話しでした。
今日は 日本最古の寺と言われている 飛鳥寺でも除夜の鐘をうつのか?
の話に進みます、、。
現在の飛鳥寺には、一般的な寺院で見られるような大きな梵鐘は常設されておらず、
大晦日に百八つの鐘を撞く「除夜の鐘」の行事も行われていません。
これは珍しいことのように思われるかもしれませんが、
実は飛鳥寺の歴史や成り立ちを考えると、ごく自然な姿だと言えます。
飛鳥寺は、推古天皇四年(五九六年)に蘇我馬子によって建立された、
日本で最初の本格的な仏教寺院です。日本に仏教が国家的に受け入れられ、
寺院という存在が形を持ちはじめた、まさに「日本仏教の原点」とも言えるお寺です。
ただし、その長い歴史の中で、
創建当初の大規模な伽藍がそのまま現在まで残っているわけではありません。
火災や政権の変化、遷都などを経て、寺の規模や姿は時代とともに変わってきました。
現在の飛鳥寺は、奈良の大寺院のように壮大な伽藍を誇るというよりも、
静かで落ち着いた佇まいの中で、飛鳥時代の仏教の息遣いを感じさせてくれる寺院です。
そのため、鐘楼や大型の梵鐘といった、
後世の寺院では当たり前になった設備は設けられていません。
これは「失われた」のではなく、
「もともと飛鳥寺の性格に必須ではなかった」
と理解すると分かりやすいでしょう。
次に、多くの方が気にされる「大晦日に鐘を叩いているのか」という点ですが、
飛鳥寺では一般的な意味での除夜の鐘は行われていません。
年末になると全国の寺院で百八つの鐘が鳴り響く光景が定着していますが、
実はこの除夜の鐘という風習は、仏教伝来当初からあったものではありません。
飛鳥時代にはまだ確立しておらず、平安時代の後期から鎌倉・室町時代にかけて、
禅宗の広まりなどとともに次第に定着していった行事なのです。
つまり、飛鳥寺が創建された時代には、
「大晦日に鐘を百八つ撞く」という発想そのものが存在していませんでした。
飛鳥寺は、日本仏教の始まりの姿を今に伝えることを大切にしており、
後世に全国的に広まった年中行事を無理に取り入れているわけではありません。
そのため、大晦日の夜に参拝者が集まり、
順番に鐘を撞くといった催しは基本的に行われていないのです。
ただし、飛鳥寺ではまったく音の鳴る法具を使わないというわけではありません。
法要や読経の際には、小型の鉦や鈴、木魚などの打楽器が用いられることがあります。
これらは読経の調子を整えたり、儀式の進行を示したりするためのもので、
除夜の鐘の代わりとして鳴らされるものではありません。
大晦日だから特別に鉦を叩く、という習慣も特にありません。
この点は、法隆寺や東大寺、あるいは各地の禅寺と比べると、
はっきりとした違いとして感じられるでしょう。
多くの寺院では、除夜の鐘が年末年始の大切な行事として定着し、
地域の人々や参拝者に親しまれています。
一方で飛鳥寺は、行事の賑わいや演出よりも、
日本仏教が生まれた頃の静かな祈りの空気を守ることを重んじている寺院だと言えます。
境内に立ち、飛鳥大仏と向き合うと、鐘の音が鳴り響く世界とはまた違った、
時間の流れを感じることができます。
そこには、「一年の煩悩を祓う」という後世の思想よりも、
「仏と静かに向き合う」という、より素朴で根源的な信仰の姿があります。
飛鳥寺の大晦日は、音で区切られる節目というよりも、
日々の延長線上として、静かに年が移ろっていく時間なのです。
現在の飛鳥寺には常設の梵鐘はなく、大晦日に除夜の鐘を撞く習慣もありません。
しかしそれは不足や欠落ではなく、
「除夜の鐘という風習がまだ存在しなかった時代の仏教」を
今に伝えているからこその姿です。
飛鳥寺は、日本仏教の原点に立ち返り、
華やかさではなく静けさの中で仏と向き合うことの大切さを、
私たちにそっと教えてくれている寺院なのです。