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社長&顧問ブログ

2026.9.24

番外編舞姫

高光産業株式会社

妹尾八郎です

 

昨日は、軍医・森林太郎が、

もう一つの顔である「森鴎外」として文学の世界を歩み始めたことを書きました。

 

そして、私が毎朝参拝している根津神社には、

その鴎外が『舞姫』を書いたとされる家が移築されています。

 

では、

その『舞姫』とは、いったいどんな物語なのでしょうか???。

 

名前は知っている。学校で習った記憶もある。

けれど、

「どんな話でしたか?」と聞かれると、

意外と思い出せない方も多いのではないでしょうか。

 

私自身も、改めて内容を知ってみると、

単なる昔の恋愛小説ではないことに気づかされました。

 

そこには、今を生きる私たちにも通じる、

人生における「選択」という重いテーマが描かれていたのです。

 

主人公は、

ドイツへ渡った日本人青年で太田豊太郎という若い日本人です。

 

幼い頃から優秀で、周囲の期待に応えながら勉強を続け、

官僚となり、国から命じられてドイツのベルリンへ留学します。

いわば将来を約束されたエリートでした。

 

ところが異国で暮らすうちに、豊太郎の心に変化が起こります。

 

それまでの彼は、

「期待される自分」「組織から求められる自分」として生きてきました。

 

しかし、

自由な空気に触れる中で、

「自分はいったい、何のために生きているのだろう」

という思いが芽生えていきます。

 

そんな豊太郎がベルリンで出会ったのが、若い踊り子のエリスでした。

父を亡くし、生活に困っていたエリス。

豊太郎は彼女を助けます。

やがて二人は愛し合うようになります。

 

しかし、

その恋によって豊太郎の人生は大きく変わります。

 

彼の行動は日本側から問題視され、官職を失ってしまうのです。

それでも、エリスと暮らす豊太郎。

 

そこには、

それまでの「出世する人生」とは違う幸せがありました。

そしてエリスは、豊太郎の子どもを身ごもります。

 

ここまで読むと、

「それならドイツに残り、エリスと生きればよいではないか」

と思ってしまいます。

 

ところが、人生はそれほど単純ではありません。

 

「日本へ戻らないか」

豊太郎の前に、再び日本社会へ戻る道が開かれます。

友人・相沢謙吉の助力もあり、

日本へ帰って仕事を続ける可能性が生まれたのです。

 

ここで豊太郎は、大きな選択を迫られます。

エリスと生きるのか。

それとも、

日本へ戻り、自分の将来を取り戻すのか。

 

愛か、仕事か。

自分の気持ちか、社会から求められる人生か。

豊太郎は苦しみます。

 

そして最終的に、日本へ帰る道へ進むことになります。

 

そのことを知ったエリスの心は大きく崩れてしまいます。

物語は、誰もが幸福になるような結末にはなりません。

 

だからこそ、読んだ後に何とも言えないものが残ります。

 

本当に豊太郎は幸せだったのでしょうか???

私はここが『舞姫』の一番考えさせられるところだと思います。

 

豊太郎は日本へ戻ります。

社会的な人生を取り戻す方向へ進みます。

 

しかし、

「それで本当に良かったのだろうか」という問いが残ります。

 

人生には、

どちらを選んでも何かを失うことがあります。

仕事を選べば、家族との時間を失うことがある。

安定を選べば、挑戦する機会を失うことがある。

夢を追えば、それまで築いたものを手放さなければならないこともある。

 

正解が一つではないからこそ、人は迷います。

 

『舞姫』が発表されたのは明治23年、1890年です。

それなのに、

そこに描かれている悩みは、今を生きる私たちとそれほど変わらないのです。

 

そして、もう一つ気になることがあります

 

ここまで『舞姫』を知ると、どうしても気になることがあります。

主人公・太田豊太郎は、日本からドイツへ留学した青年。

そして作者・森鴎外自身も、若き日に日本からドイツへ留学しています。

 

舞台もドイツ。若い日本人男性とドイツ人女性との恋。

あまりにも鴎外自身の人生と重なる部分があります。

 

では、

『舞姫』は鴎外自身の恋愛体験を小説にしたのでしょうか。

 

実は鴎外がドイツから帰国した直後、

一人のドイツ人女性が彼を追うように日本へやって来ています。

 

この女性と『舞姫』のエリスとの関係については、

後世さまざまな研究や議論がなされてきました。

 

もちろん、小説をそのまま事実だと考えることはできません。

 

しかし、ここまで知ってしまうと、

私はますます鴎外という人物に興味が湧いてきました。

 

毎朝、根津神社で目にする一軒の古い家。

その家の中で、

若き鴎外は何を思いながら『舞姫』を書いていたのでしょう。

 

ドイツで過ごした日々。異国で出会った人々。日本へ戻ってからの自分。

そして、

心のどこかに残っていた思い。

 

それらを胸の中でたどりながら、原稿に向かっていたのでしょうか。

 

一軒の家を見ただけでは分かりません。

けれど、その家で生まれた作品を知ると、

古い建物が急に人間の温もりを持って見えてきます。

 

建物が残るということは、単に柱や屋根が残ることではないのかもしれません。

 

そこで誰かが悩んだこと。誰かを思ったこと。

何かを書こうとしたこと。そして、一つの作品を世に残したこと。

そんな「人の心」まで、次の時代へ伝えていくことなのだと思います。

 

明日の朝、根津神社で「舞姫の家」の前を通った時、

私はきっと以前とは違った目でこの家を見るでしょう。

 

百年以上前、この家の中で一人の青年が、

「人は、自分の人生をどう選ぶのか」という問いを物語にしました。

 

そしてその問いは、時代が変わった今も、

私たち一人ひとりに投げかけられているような気がします。

 

人生には、何度も分かれ道があります。

その時、

私たちは何を大切にして、どちらの道を選ぶのか。

 

『舞姫』は昔の物語ではありません。

「あなたなら、どうしますか」

そう静かに問いかけ続けている物語なのかもしれませんね、、、。

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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