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社長&顧問ブログ

2026.8.26

前例がない事にチャレンジする

高光産業株式会社

妹尾八郎です

 

昨日までは三回にわたって、

私が取得した特許第4642154号「電子商取引システム」

についての話しでした。

 

住所や氏名という大切な個人情報を必要以上に相手へ知らせることなく、

それでも商品をきちんと届けられる仕組みをつくれないだろうか。

そこから生まれた発明でした。

 

今回は番外編として、

この発明を考えた頃に経験した、

今でも忘れられない出来事について書いてみたいと思います。

 

これは、特許そのものの話というより、

「まだ世の中に存在しないものを、人はどこまで想像できるのか」

というお話です。

 

この仕組みを考えたとき、私はもう一つ大切なことを考えました。

 

それは、

「このサービスを、一体どんな会社が運営すべきなのか」

 

ということでした。

 

新しいインターネットサービスだからといって、

新興のIT企業が運営すればよいとは、私は考えませんでした。

 

なぜなら、このシステムが預かるものは商品だけではないからです。

 

氏名、住所など、その人にとって非常に重要な個人情報を預かります。

しかも、この発明の中核にある情報管理者は、

それらの情報を安全に管理し、必要なときに必要な相手だけへ情報をつなぐ、

いわば「個人情報の金庫番」のような存在です。

 

それならば、

単にIT技術を持っている会社ではなく、

「この会社になら自分の大切な情報を預けても大丈夫だ」

と社会から信用される企業でなければならない。

 

私はそう考えました。

そこで頭に浮かんだのが、ある大手セキュリティ企業でした。

 

「安全」と「安心」を事業として提供している会社なら、

このサービスを運営する企業として最適なのではないか。

そう考えたのです。

 

この特許では、受取人に識別記号を付けるだけではありません。

商品を配送するときには、さらに一時的な仮識別記号を発行する仕組みにしています。

 

今でいう「ワンタイム」の発想に近いものです。

なぜ、そこまでしたのか。

そこにも私なりの理由がありました。

 

当時、私はある犯罪の話を耳にしていました。

 

宅配便を発送する際、

送り状には氏名や住所、電話番号などを書くのが普通でした。

コンビニエンスストアなどへ荷物を持ち込めば、

その送り状を付けた荷物を店員に預けます。

 

つまり、その気になれば、

そこに書かれている個人情報を見ることができる環境が存在していました。

 

そして、そうした配送伝票などから知った個人情報が悪用され、

女性につきまとうなどの犯罪につながったという話を耳にしたことがありました。

 

私は、それがとても気になっていました。

 

商品を届けるために住所が必要だからといって、

配送に関係するすべての人が、

その人の住所を知る必要があるのだろうか。

 

そこで考えたのが、識別記号に加えて、

一回の取引のためだけに使用する仮識別記号でした。

 

必要な情報を、必要な人に、必要なときだけ渡す。

それ以外のところでは、できる限り個人情報そのものを見せない。

 

今なら比較的理解していただきやすい考え方だと思います。

しかし、これを考えたのは約20年前のことです。

 

当時は、

現在ほど「個人情報を守る」という意識が社会全体に浸透していませんでした。

 

少し上の世代の方なら覚えておられると思いますが、

学校の卒業アルバムには、

氏名だけでなく住所まで掲載されていることがありました。

会社、学校、同窓会、さまざまな団体で住所入りの名簿が作られ、

それを会員に配ることも珍しくありませんでした。

 

今から考えると驚くようなことですが、当時はそれが「普通」だったのです。

 

だから私は、

「これからインターネット社会になれば、

個人情報そのものが大きなリスクになる時代が来るのではないか」

と考えていました。

 

そこで、

このアイデアを発明としてまとめ、権利化することにしました。

 

そして同時に、

「これは安全・安心を提供している企業に提案すべきだ」

と考え、ある大手セキュリティ企業へ持ち込んだのです。

 

私はかなり自信を持っていました。

個人情報を守りながら電子商取引ができる。

住所を知らない相手にも商品を届けられる。

さらに、

一時的な仮識別記号まで使って、情報が不用意に広がらないようにする。

 

「これは将来、大きなビジネスになるのではないか」

そう思っていました。

 

幸い、

当時その企業の経営幹部の方に直接説明する機会をいただくことができました。

私は期待を持って説明しました。

 

ところが――。

私の期待とはまったく反対の結果でした。

ほとんど興味を示していただけなかったのです。

 

あまりにも反応が薄かったので、

「一体、なぜだろう?」

と思いました。

 

そこで恐る恐る理由を尋ねました。

 

すると返ってきたのは、

今でも忘れられない趣旨の言葉でした。

「プレゼントをもらえるのなら、住所くらい教えるでしょう。

それが普通ではないですか。」

私は耳を疑いました。

 

しかし同時に、後になって考えると、

この言葉こそが非常に重要だったのだと思います。

 

その方がおかしかったのではありません。

 

当時の社会では、

それが「常識」だったのです。

常識とは「昨日までの世界」なのかもしれない

 

その後、

社会は大きく変わりました。

個人情報保護への意識は急速に高まり、

企業も個人情報の取得や管理に非常に慎重になりました。

 

住所録を簡単に配ることも少なくなりました。

年賀状を廃止する企業も増えました。

 

そして今では、

SNS上で親しく交流していても、

「自宅の住所は教えたくない」

と考えることは何ら不思議ではありません。

 

つまり、あのとき、

「そんなことを気にする人はいない」

と思われていたことが、今では当たり前の感覚になっているのです。

 

この経験から、私は一つのことを強く感じました。

 

人間はどうしても、

「現在の常識」を基準に未来を考えてしまうということです。

 

しかし、

新しい発明や新しい事業は、その常識の外側から生まれることがあります。

 

「前例はありますか?」

私はその後も、さまざまな新しいアイデアを企業へ提案してきました。

そのとき、何度となく聞いた言葉があります。

 

「前例はありますか?」

そしてもう一つ。

「どこかで成功している事例はありますか?」

 

もちろん企業として、リスクを考えることは当然です。

 

前例を調べることも、成功事例を研究することも大切です。

しかし、私はいつも少し不思議に思います。

もし前例があるなら、

それは本当に「新しい事業」なのでしょうか。

 

もし他社ですでに成功しているなら、

自分たちは二番手、三番手から始めることになります。

 

「誰かが成功したことを確認してから始めたい。」

それは安全な経営判断かもしれません。

しかし、それだけでは世界で最初のものは生まれません。

 

海外の企業の方々と話していると、

これとは反対の反応をされることがあります。

すでに誰かがやっているサービスには、それほど興味を示さない。

 

むしろ、

「それは、まだ誰もやっていないのか?」

というところに興味を持つ。

 

「前例がないから危険だ」と考えるのか。

「前例がないからチャンスだ」と考えるのか。

この違いは、とても大きいと思います。

 

もちろん、どちらが常に正しいという話ではありません。

 

前例のない事業には大きなリスクがあります。

失敗する可能性もあります。

 

しかし、

新しい市場をつくった企業を振り返れば、最初は必ず、

「そんなものが本当に必要なのか?」

と思われた時代があったはずです。

 

実は、提案先の企業自身も

「前例のないこと」から始まっていたのでした、、、

 

今振り返ってみると、ここには少し面白いところがあります。

私がこの仕組みを提案した大手セキュリティ企業も、

創業した当時は、

日本にはほとんど存在しなかった

新しい「安全・安心」のサービスを事業として切り開いた会社だったのです。

 

つまり、その会社自身が、

「前例のないところから、新しい市場をつくった会社」

だったのです。

 

だからこそ私は、その会社なら、

この発明の意味を理解してくれるのではないかと思ったのでしょう。

 

結果として、そのときには実現しませんでした。

 

しかし私は、それを失敗だったとは思っていません。

むしろ、

「新しいアイデアは、社会の常識が追いつくまで理解されないことがある」

ということを学ばせてもらった、大切な経験だったと思っています。

 

この特許第4642154号「電子商取引システム」の考え方は、

日本だけで終わったわけではありません。

 

私はこの発明について、米国、そして台湾でも権利化しました。

 

なぜ海外でも取得したのか。

それは、この問題が日本だけの問題ではないと思ったからです。

 

インターネットで人と人がつながる。

しかし、個人情報は守りたい。

それでも現実の商品は届けたい。

これは国境を越えたテーマです。

 

そして約20年が経った今、

SNS、EC、キャッシュレス決済、オンラインコミュニティなど、当時とは比較にならないほど環境が整いました。

 

だから私は今、改めて思っています。

 

「もう一度、アメリカで挑戦してみたらどうだろう。」

20年前には「非常識」だった。では、今はどうだろう

 

20年前、

「プレゼントをもらえるなら住所を教えるのが普通だ」

と言われました。

 

確かに、その時代ではそうだったのかもしれません。

しかし今は、

「住所を教えなくても、安全にプレゼントを受け取れる方がいい」

と考える人がいても、何の不思議もありません。

 

社会が変わったのです。

技術も変わりました。

そして何より、

人々のプライバシーに対する考え方が変わりました。

 

発明には、早すぎるということがあるのかもしれません。

 

しかし、

 

「早すぎた発明」

「間違った発明」は同じではありません。

 

社会が追いついたとき、もう一度その発明を見直してみれば、

そこに新しい市場が見えてくることがあります。

 

私は、新しいことを考えるとき、

「これは常識的だろうか」

というところからは、できるだけ考えないようにしています。

 

むしろ、

「なぜ、今までこうしてきたのだろう?」

と考える。

 

住所を知らなければ商品を届けられない。

本当にそうなのか。

 

前例がなければ事業化できない。

本当にそうなのか。

 

成功事例がなければ挑戦できない。

本当にそうなのか。

 

誰かが最初に始めなければ、

成功事例そのものが生まれることはありません。

 

発明も、新規事業も、

最初の一歩には必ず「前例がない」という壁があります。

 

だから私は、

「前例がありません」

という言葉を聞いたとき、

 

「それなら駄目だ」と考えるのではなく、

 

「では、自分たちが最初の前例になればいい」

と考えたいのです。

 

特許第4642154号「電子商取引システム」。

20年前には、少し早すぎたのかもしれません。

 

しかし、世界が大きく変わった今だからこそ、

もう一度問いかけてみたいと思っています。

 

「住所を知らなくても、想いを届けられる社会。」

 

20年前には理解されなかったこの発想は、

果たして今の世界ではどう評価されるのでしょうか。

 

私はもう一度、海の向こうで、

その答えを確かめてみたいと思っています。

 

前例がない。

それは、新しいことを諦める理由ではありません。

まだ誰もつくっていない未来が、

そこにあるということなのかもしれません。

 

まだまだ 挑戦は続きます

 

明日からは 新しい特許の話にすすむのか???

高光産業株式会社 公式サイト

https://takamitsu.com/

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